遊星からの物体X(1982)

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監督 ジョン・カーペンター

出演 カート・ラッセル

『遊星からの物体X』は、あの『ハロウィン』を監督したジョン・カーペンターの1982年作のホラー。本作は、1951年のハワード・ホークス制作、クリスチャン・ネイビー監督『遊星よりの物体X』をリメイクしたといわれている。

 

あらすじ

オープニング。宇宙から円盤が地球に向かって飛んできた。円盤は大気圏に突入する。時は移り、1982年南極大陸。米国南極観測隊の基地に1匹の犬が逃げこんできた。上空では何故かヘリコプターが銃でその犬を撃ち殺そうと発砲を行っている。ヘリコプターは着陸し、運転手は米国の観測基地内でも発砲を続けたため、ゲーリーに射殺された。この事件を通報しようとするが、無線がつながらない。マクレディと医師のコッパーはノルウェイ基地へ原因を探りに行く。ノルウェイ基地からは煙があがり、中では観測隊員が異常な最後を遂げて凍りついていた。そして二人はさらに基地内で何かを取り出したような長方形の氷の魂を見つけた。そして外では人間のような物体が焼け焦げた状態で煙を放っているのを発見した。その人の形をかろうじて保った焼け焦げた物体を米国基地に運び入れ、隊員たちはその物体の頭部がてっぺんから二つにぐにゃりと変形しているのに息をのんだ。その夜、ノルウェイ隊員に殺されかけた犬が犬小屋の中で変化をはじめ、他の犬を襲い始めた。変化したその姿は実に醜く、触手を何本も出して犬たちを餌食にしていた。火炎放射器で何とか退治した。

ノルウェイ観測基地から持ち出したビデオを見ると、そこには氷の地面から観測隊員たちがある物体を取り出しているのが確認できた。マクレディはその物体が今回の事件に関係があると知り、物体のある場所へヘリで飛ぶ。そこには、巨大な円盤が埋もれておりその付近にはノルウェイ観測基地で見つけた長方形の氷を取り出した跡が残っていた。米国基地に戻り、数万年前にUFOが墜落し、南極の気候で冷凍されていた地球外生命体がノルウェイ人たちが掘り起こしたことで再生し、今回の事件につながったと半信半疑ながらも推測するマクレディたち。ブレアはこの地球外生命体について独自の調査を行う。そこで、75パーセントの確率でこの米国観測隊員の誰かが地球外生命体に同化されており、生体が社会に侵入した場合、二万七千時間で全人類が征服されてしまう結果を出した。ブレアは危険を感じ、ノルウェイ観測基地から運び出した物体を物置に隔離するように隊員たちに頼んだ。そこで、死んでいるはずのその物体がベニングスを襲い、触手を使ってベニングスに同化を始める。そして次々に同化されておぞましい姿になっていく。

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評判

公開当初の評判は芳しくなく、全米で8か所の公開にとどまった。というのも、そのころにはスティーブンスピルバーグの『E.T』がちょうど公開されていたのも一つの理由だ。しかし、ビデオのリリースでは、徐々に評判を集めていく。

 

脚本は、バート・ランカスターの息子、ビル・ランカスターが担当している。また、ジョン・カーペンターといえば、自分の作品の作曲も手がけるという多才さを発揮しているが、本作では、あの『荒野の用心棒』等を手掛けたエンニオ・モリコーネが音楽を担当している。この作品の監督はもともとトビー・フーパーに依頼されたいたという。しかし、カーペンターは『ハロウィン』の成功によって、本作の監督に抜擢された。

 

撮影

室内での撮影はユニバーサルのスタジオセットで行われたが、屋外撮影は南極ではなく、カナダのブリティッシュコロンビアで行われた。この場所は、車でのアクセスが可能で、撮影に欠かせない降雪も十分期待できたため、選ばれたという。夏の間にセットを完成させ、冬の時期になって撮影が行われた。11月から12月の撮影ということで気温は氷点下になるため、かなり困難を強いられたという。日照時間が短いため、限られた時間での撮影であり、カメラが凍ってしまうトラブルも発生した。ノルウェイ観測基地のシーンは、実は撮影の最後に行われたという。というのも、映画最後に米国観測基地を爆破させるがその残骸を使ってもぬけの殻となったノルウェイ観測基地の異常さを表現することができた。

 

『遊星からの物体X』には、女性キャストが存在しない。唯一出てくるのは、冒頭でマクレディが対戦するチェスゲームの機械音声が女性のものであり、それはカーペンターの妻エイドリアン・バーボーのものだという。

 

編集担当のトッド・ラムジーによると、ラムジーは映画をハッピーエンディングにしてはどうかと提案したという。一度はカーペンターも賛成し、実際にマクレディが生還し、血液テストで同化されていないことを証明するシーンも撮影を行ったそうだ。しかし、試写の段階でカーペンターはそのハッピーエンドを使わないことに決め、今あるような希望のないエンディングになったという。

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閉じられた空間

本作は閉じられた空間をうまく利用することで、観客の恐怖をさらにあおっている。というのも、まずは無線が突然使えなくなり、外部から応援を呼ぶことができなくなってしまう。完全なる陸の孤島だ。そして初めのうちはヘリコプターを使用できたが、ブレアが破壊してしまい、移動手段もなくなってしまう。外に出れば凍死してしまい、だからといって中にいればいずれはすでに同化されている誰かに自分も襲われてしまう、といった逃げ道のない状況と閉鎖感を作り上げている。そんな中、頭から真っ二つに割れて人間に食らいつくように、考えもしないようなグロテスクな変身を遂げる物体に襲われるのはかなりの恐怖を覚える。

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続編

2004年には、カーペンターはこの『遊星からの物体X』の続編を考案しているとインタビューで答えている。生還したのかどうかは定かではないが、少なくとも映画の最後まで生き残るマクレディとチャイルズの二人のその後についてストーリーを展開するつもりだったそうだ。ブレアがすべての通信機器をぶち壊してしまう前にチャイルズが手に入れたトランスミッターを使用し、救助を呼ぶことに成功する、ということだけ明かし、その他の詳細についてはほとんど公にしていないという。しかし、続編製作は難航している模様で、スタジオ側と製作費の面で折り合いがつかないことも懸念しており、2008年現在の段階でも脚本や進んでいるがまだ続編製作の話題は出ていないようだ。

参考文献

http://www.theofficialjohncarpenter.com/pages/themovies/th/thpronotes.html

http://www.houseofhorrors.com/thing.htm

http://www.sensesofcinema.com/contents/directors/03/carpenter.html

 

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